GameFi

Play-to-Earn(遊んで稼ぐ)というコンセプト

Web3に分類されるものの中にGameFi(Game + Finance)というコンセプトがあります。
ゲーム + 金融という新結合(イノベーション)です。
ここではまず、これまでのゲームのビジネスモデルを振り返ってみましょう。
※ここではゲームと書いていますが、ほかのコンテンツ・サービスにも当てはまります。

(ゲーム)コンテンツ・サービスのビジネスモデルの変遷

購入(買い切り)型

PCゲームソフト、ファミコンソフトなどの時代。昔はほぼこれしかありませんでした。
現在でもSwitchやPlayStation4などのゲーム専用機のソフトはこのパターンが多いです。
また、有料スマホアプリは今でもこのパターンです。とはいえ、最近はApp内課金のものも多くなってきています。
ゲーム専用機でも最近はインターネットに接続してダウンロードして購入するということも可能になっています。

サブスクリプション型

ソフトウェアを購入し、それとは別に月額などで課金するモデルです。
初期の大規模オンラインゲーム(MMO)はこのパターンです。
私はGNO(ガンダム・ネットワーク・オペレーション)にハマっていました。
最近はPlayStation Nowのように月額固定で、登録されているソフトすべて遊び放題というものもあります。
ゲーム以外では、Netflix、Amazon読み放題、Audible、Apple Musicなど様々なコンテンツサービスでも使われています。
また、日経新聞電子版などのメディアもサブスクリプション型です。
ビジネスジャンルでは今もこれが主流です。

フリーミアム型

基本プレイを無料として、ゲーム広告の要素を入れたり、有料のアイテムを購入させるというビジネスモデルです。
ゲームアイテムとして、通称「石」と呼ばれるゲーム内の通貨的なものを有料で販売しています。
「石」はガチャなどと呼ばれる抽選式(くじ引きのような)アイテムを引いたり、体力の回復や、コンティニューなどいろいろな場面で使用することができます。
「石」は無料でももらえることもありますが、有料の「石」でなければ参加できないガチャなどがあります。
現在のスマホゲームの主流といえます。スマホのセルラン(セールスランキング)を見れば、月で数十億稼ぐものも確認できます。
昨年はCygameの「ウマ娘 プリティーダービー」が年間1,000億円の売り上げを記録したことで話題になりました。
なお、世界規模では3,000億円以上になるものもあるようです。

ウマ娘、年間売り上げ1000億円に 2021年に世界で最も売れたモバイルゲームは?

課金の大きさにより、無課金、微課金、重課金、廃課金などと呼ばれますが、多くのゲームは多数の無課金、微課金プレイヤーと一部の重課金、廃課金プレイヤーで構成されています。なお、どこからが重課金で、どこからが廃課金なのかの明確な定義はありません。

微課金・重課金・廃課金の課金額基準はいくら?どこまでなら微課金?

GameFi型(ブロックチェーンゲーム)

GameFiにおいては。「Play-to-Earn(遊んで稼ぐ)」というコンセプトを持つものがほとんどです。
これに関して一番有名な事例は「Axie Infinity」です。

Axie Infinity

https://axieinfinity.com/

Axie Infinityはベトナムの開発企業SkyMavis社によって開発されたブロックチェーン・ゲームです。
フィリピンではこのゲームにより生計を立てたり、家を建てたという事例もあります。フィリピンの平均月収は5万円弱くらいとのことなので、一日2,000円くらい稼げれば生活は成り立つということです。Axie Infinityが成功した1つのイノベーションが「スカラーシップシステム」です。
スカラーシップとは、別の人が所有しているアクシー(NFT)を貸し出して、両者の契約の元に報酬を分け合うことができるというシステムです。
日本ではゲームのアカウントを他人に貸し出すことはほぼ禁止されています(見つかるとアカウント取消になる)が、Axie Infinityでは公式に認められています。

Axie Infinityは、ゲームを始めるためには3体のアクシー(NFT)を入手しなければなりません。しかし、一体5~6千円以上(ETHでの購入のため、ETHの価格変動にも影響される)の値がついているため、初期投資にある程度の金額が必要です。また、稼げるアクシーは当然値段も高くなっていますので、初期投資をかけられない人はスカラーシップで遊ぶ形になります。
GameFi型のゲームの多くはこのように初期投資が高くなりがちです。Axie Infinityは一応3万円くらいから始められますが、安いアクシーを購入してもあまり稼げません。以前はデイリー報酬などがありましたが、今はなくなって対人戦闘で勝たなければ報酬が得られなくなっています。
この改変により、Axie Infinityから撤退したという人が結構います。これによりゲーム内トークンの価値が下がるとプレイヤー数も減ることになりますので、ゲームメーカーとしては、いかにプレイヤー数を維持または増やしながら、支出を抑えられるかのバランスをとっていかなくてはなりません。

GameFi型のゲームの特徴として、ゲーム内で使用されるトークン(貨幣的なもの)が、暗号資産の取引所で取引できるということがあります。
これまでのスマホゲームの場合、ゲームに課金をして石などを入手したりガチャでカードを引いたりしますが、これをほかの人と取引することはRMT(リアルマネートレード)などと呼ばれ禁止されていることが多いです。しかし、ゲームにいくら課金したとしても、そのゲームが配信終了となればすべて無価値になってしまいます。GameFi型ゲームではゲームで得られたトークンを暗号資産取引所で他の資産に変えることができるので、現実のお金に換えることができます。

日本ではパチンコなどでも表向きは現金化できないことになっていますが、そういったことができてしまうわけです。
なお、日本ではこのあたりの法制化が遅れており、同じようなゲームを作ろうとすると違法になる可能性がありますので、現時点では大手ゲーム会社は手を出すことができていません。こういったことをする場合は海外法人として行う必要があります。

GameFi、アジアで規制の壁に直面 – 日本では賭博と見なされる可能性

GameFiに限らず、DeFiやNFTなどのWeb3関連で事業を興そうという場合、日本では制約が大きいため、日本の技術者が海外に出て行ってしまうと警鐘を鳴らす人もいます。これに関連して、自民党デジタル社会推進本部 NFT政策検討PT(平将明座長)は3/30、「NFTホワイトペーパー(案) ~ Web3.0時代を見据えたわが国のNFT戦略 ~」をとりまとめたことを発表しました。

自民党、NFTホワイトペーパーの草案を発表

Play-to-Earnは機能するか

Play-to-Earnというビジネスモデルはどのような仕組みで成り立っているのでしょうか。
大雑把に説明すると以下のようなモデルと言えるかと思います(もし誤解があればご報告ください)。

  • VC(ベンチャーキャピタル)などの投資家からお金を集めます。
  • プロジェクトでトークンやNFTを発行します。
  • トークンは何段階かで順次購入者を集め、最終的には上場させます。
  • 上場することにより、トークンの価値は10~数千倍の価値になるので、初期の投資家はそこで利確します。
  • 一方、ゲームプレイヤーは最初にゲームを始めるために投資を行います。(最初のハードルが高くなる所以)
  • これにより、メーカーは資金を集めつつ、プレイヤー人口を増やすことでさらに資金を集めつつ、プレイヤーにはトークンを配ります。
  • 一部のプレイヤーはそれを現金化することで収益とします。

このモデルはプレイヤー人口が増え続けることや、購入したアイテムを現金化しないまま使用し続けてもらったり、稼いだトークンをゲーム内で利用するという人がある程度いなければ成り立ちません。このことから、Play-to-Earnは一種のネズミ講ではないかと言う人もいます。

しかし、ゲーム内課金でガチャという文化を生み出し、開発会社が巨額な富を得るという現在のスマホゲームの構造とGameFiのどちらが不健全かというと個人的には何とも言えないのではないかと思います。
私自身はスマホゲームでの微課金、無課金プレイヤーですが、1つのゲームに何百万、何千万と課金するプレイヤーがいるというのも現実です。
課金したゲームはいつまでも続くわけではなく、もしそのゲームが終了したときには、かけた金額がすべて無駄になります。
もちろん、課金することは個人の自由ですし、それにより得られたレアアイテムを持ちながらプレイし続けられるというエンターテインメントの対価として支払っているということであればそれで良いのでしょうが。

個人的には今のスマホゲームのようなフリーで遊べる部分と、GameFiにおける「かけたお金が無駄にならない」ということが両立するゲームが出ることを望みます。

GameFi事例

以下、いくつか注目しているGameFiの事例をご紹介します。

元素騎士(GENSOKISHI ONLINE)

https://genso.game/ja/

台湾で2012年に「Game of the year金賞」を受賞したエレメンタルナイツオンラインのGameFi。
GameFi 初の 「Free to Play」 & 「Play to Earn」 & 「UGC to Earn」 の要素を実現します。
将来構想としては、
CtoC で個人や企業が装備を製造、販売
CtoC で NPC(町人など)、モンスターキャラを制作、配置
ランド(土地の区画)の権利販売 ランド上に建物要素の構築と構成
企業やメーカーが CtoC で参入
など、メタバースのプラットフォームとして経済圏を広げていきます。
(WhitePaperより)
https://genso.game/pdf/WhitePaper_genso_JP.pdf

ゲームはまだオープンにはなっていません。今のところ、2022年5月末にクローズドα、2022年7月にクローズドβ、2022年8月に正式版リリースの予定です。
GameFiとしては珍しく初期投資なしで始めることができる模様。
これまでのGameFiは稼ぐことに重点が置かれていてゲームとしては面白くないというものがほとんどでしたが、すでに10年以上実績のあるゲームということで、期待はかなり高いようです。

The Sandbox

The Sandbox

https://www.sandbox.game/jp/
The Sandboxはイーサリアムのブロックチェーン技術を基盤としたユーザー主導のゲームプラットフォームです。
ユーザーはMetaverse(メタバース)上にLAND(土地)を購入、レンタルをすることで、オリジナルのゲームやアイテム、キャラクター、サービスを作成することができます。
さらにユーザーは所有するLANDやアイテム、キャラクターをNFTとしてプラットフォーム上に自由に売買することが可能です。
2022年3月にα版シーズン2が開催されました。
日本の仮想資産取引所であるCoincheckがThe Sandbox上のLANDに、2035年の近未来都市「Oasis TOKYO」を制作するプロジェクトを開始したことで注目されています。

The Sandbox(ザ・サンドボックス)とは?話題のブロックチェーンゲームの始め方や覚えておきたい用語を解説

STEPN

https://stepn.com/

STEPNは、Game-FiとSocial-Fiの要素を組み込んだWeb3ライフスタイルアプリです。
STEPNは、多くの人にとって欠かせない日常的な活動である「移動」を中心に構築されています。私たちは、move&earnのコンセプトを効果的に実現した最初のプロジェクトで、Solana Ignition Hackathon 2021で500以上のプロジェクト中4位に入賞しました。
ユーザーは、スニーカーという形でNFTを装備します。屋外で歩いたり、ジョギングしたり、走ったりすることで、ユーザーはゲーム通貨を獲得し、ゲーム内で使用したり、現金化して利益を得たりすることができます。
Game-Fiにより、STEPNは、何百万人もの人々をより健康的なライフスタイルに導き、気候変動と戦い、一般の人々をWeb 3.0に接続することを目指しています。同時に、Social-Fiの側面から、ユーザーが生成するWeb 3.0コンテンツを促進する長期的なプラットフォームを構築することを目指しています。
(STEPN WHITEPAPER Overview[翻訳])
https://whitepaper.stepn.com/

個人的に今もっとも注目している GameFiアプリケーションです

Move-and-Earnと書かれていますが、やっていることはPlay-to-Earnと同じです。

Walker、Jogger、Runner、TrainerというタイプのNFTスニーカーを購入して始めます。スニーカーのタイプ毎に有効な移動速度レンジが決められています。この速度レンジを守って移動している間ゲーム内通貨を獲得することができます。
所持しているスニーカーの数により最大のエネルギーが決まっています。ゲーム内通貨を獲得するにはこのエネルギーを消費して移動する必要があります。スニーカーには耐久値が設定されており、移動を続けていると、耐久値が下がっていきます(下がり方はResilienceというパラメーターにより変わります)。下がった耐久値はゲーム内通貨を消費することで修理(Repair)することが可能です。スニーカーを複数持っていると、ゲーム内通貨を使用して新しいスニーカーを生み出す(Mint)することができます。スニーカーにはCommon、Uncommon、Rare、Epic、Legendaryというレアリティがあり、高レアのものほどパラメーターが高くなっています。

現時点ではNFTスニーカーを購入しなければプレイできませんが、先述したGameFiの通例に従い、これが結構高価です。
一応8SOL(SOLはSolanaの暗号資産)くらいから購入できるのですが、2022年2月くらいは1SOL=10,000円前後だったものが、最近はSOLの高騰と円安の影響で1SOL=16,000円くらいになっています。(2022/4/5時点)

私は1SOL=13,000円後半の頃に購入しましたが、一時的に9,000円くらいのときがあったので、このときに買っておけばと思っています。
一方で、移動して得られるゲーム内通貨(GSTというトークン)も2月くらいは約300円だったものが、今日は538円(2022/4/5)と高騰しています。
スニーカーのタイプや性能などにより変わりますが、30分程度で4GSTくらい得ることができるので、これはかなりモチベーションが上がります。

有料のフィットネスジムに月会費をかけて、「月会費がもったいないから」という消極的な理由で通うよりも、「報酬をもらいながら」運動するという理由の方が人を動かすことができるように思います。少なくとも私はそうです。(過去に月会費制のフィットネスジムの契約経験あり)
そんな私もランナータイプのスニーカーを購入してから、毎日ランニングを始めました。(運動不足状態だったので休み休みですが)

将来的にはAxie Infinityのスカラーシップシステムのようにレンタルも可能になるようなので、そうなればさらに広まると思われます。
ゲームは面白くてもそれだけではある意味時間の浪費ですが、個人の健康と結びついているところがすばらしいと思います。
ポケモンGOのコンセプトに近いものです。
個人的にはもう一足NFTスニーカーが欲しいのですが、もう少しSOLが下がってくれないときついですねえ。

始めてみたいという方は相談に乗りますのでお気軽にお問い合わせください。

なお、ほとんどのGameFiのゲームは日本語に対応していません。これはWeb3技術・サービス全般にあてはまります。
日本市場はすでにこの分野において世界からあまり目を向けられていないということかもしれません。

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